愛媛県の建築めぐり/おすすめ有名建築一覧【2選】|Ehime Architecture Guide

シルバーハット(伊東豊雄建築ミュージアム)

基本情報

設計者

伊東豊雄建築設計事務所

建築概要

伊東豊雄建築ミュージアムは、建築家伊東豊雄氏の建築作品を展示する施設として2011年にオープンしました。大三島には、すでに所敦夫氏が自身のコレクションを展示する「ところミュージアム大三島」を市に寄付していました。所氏からその別館の設計を依頼された伊東氏が、将来の建築や「若い建築家を育てる塾を作りたい」という夢を語ったところ、所氏が自身の美術館ではなく伊東氏の美術館をつくることになり、建設費を支援して完成後に今治市へと寄贈されました。

ミュージアムは、2009年のオスロ市ダイクマン中央図書館コンペティション応募案の一部を再現したスティールハットと、1985年に竣工したかつての伊東氏の自邸を再現したシルバーハットからなります。特にシルバーハットは当時の住宅における建築作品の新たな可能性を提示しました。

シルバーハットの平面は4×5列のコンクリートの柱が立てられ、その柱の間に外壁やガラス、開口部などの壁面によってプランニングされています。さらに屋根は3角形のスチールフレームによって構成されたヴォールトの屋根がコンクリート柱の上に載せされています。天高は柱のスパンやヴォールトの懐で設定され、場所によって様々な天高の空間を生み出しています。

柱間に架け渡された鋼板を曲げ加工した雨樋が梁としてヴォールト屋根を支える

当時の住宅作品といえば篠原一男などに代表されるような、視覚的芸術として非常に構成がガッチリと計算され尽くした、非常に構成的な設計になっていました。しかしシルバーハットはそんなガチガチに固定された建築作品を非常にプランの自由度が高く、施工性の高い可能な非常に即物的な住宅作品としてこれまでの常識を変える作品になりました。

リビング オリジナルの壁面は左側がキャビネット、右側が引き違いのガラスサッシだった
今回の再現で事務スペースとして使用できるように両側本棚となったが、壁面のデザインが変更になっても、ヴォールトによる開放的な空間は変わらない 再現でこの住宅の即物性を表現している
リビングよりロフトになった寝室方向を見る 奥には瀬戸内海の景色が広がる 奥のガラスもオリジナルでは縦のサッシより右側は壁面になっていたが、再現では全面ガラスになっている

伊東氏自身は「空に向かって身体が開放的になるような空間をイメージした」としていますが、それ以前の「花小金井の家(1983年)」では、構造体の重い/軽いというイメージによる使い分けをしていました。それが今回はRCの柱/スチールのヴォールト屋根というような形で建築表現・施工性における新たな可能性を提示しました。それはその後の伊東氏の作品にとって重要な考え方となっています。たとえば「八代市博物館」「ぎふメディアコスモス」「高雄ワールドスタジアム」「国立競技場(アンビルド)」といった作品は、上下階の構造形式の重い/軽いという使い分けで、新たな空間の創出や建築の問題の解決を可能にしています。ぜひ以上に挙げた作品の記事もご覧ください。

ヴォールトの高さを変えることでプランニ応じて自由に階数・天高を設定することができる

今治港駐輪施設・今治港トイレ

手前のヴォリュームがトイレ、奥の2つが駐輪場

基本情報

設計者

西沢大良建築設計事務所

建築概要

今治港駐輪施設・今治港トイレは、しまなみ海道のサイクリング拠点や今治港のフェリー利用者の利便性を高める駐輪・便益施設として2016年に竣工しました。建物は木造の3つのヴォリュームから成り、うち2つはリニアな形状の駐輪施設、1つはトイレになっており、いずれも海岸線に沿うように配置されています。駐輪場は必要最低限のヴォリュームとして高さ2.6m、一方のトイレは公衆便所としては異例の高さの5.4mになっています。

駐輪場の問題として、自転車が集合することによる風景の悪化と散乱の問題があります。ラックで自転車を整列させるという手段もありますが、本プロジェクトでは建築のインテリアのデザインで、都市の交通の問題を解決するという試みがなされています。まず前提として駐輪場では海風で自転車が倒れぬよう屋内の駐輪場の提案がなされました。駐輪場の問題として利用者はなるべく出口の近くに停めるという「習性」があり、特に出入口が1箇所ですと自転車がそこに極端に集中してしまいます。本駐輪場ではリニアなヴォリュームの両端に出入り口を設置することで、空間内に両方向からの流れを生み出し、建築計画的に1箇所に固まる事態を避けています。さらに天高2.5mと駐輪場としてはとても低いですが、トップライトが等間隔に設けられ、建築のインテリアかのようなスケールと照度、内装(暗い箇所と明るい箇所の連続)になっています。部屋のようなスケール感と光の演出を施すことで、利用者は電車やカフェの席取りで「なるべく空いているところから座ろうとする」かのような心理や、「本を本棚にちゃんと戻す」「デスクの上を整える」といった屋内にいるかのような心理が働き、無意識に「ここは整えられた場所だ」と一定の間隔を保って自転車を停める環境を生み出しています。そして見事に建築・インテリアの設計によって交通の問題を解決しているといえます。(これがもし、天高の高い殺風景な土木的空間でしたら、人はそこをただの物置場と認識し、自分さえ良ければいいという心理が働くことで、出入り口付近にぐちゃぐちゃに群がってしまいます)。

トップライトによる明暗の連続
都内にあるオフィスの駐輪場 ただの停めるだけの空間は利用者は自分の好きな場所に停めてしまう

またトイレは桟橋ゲートの変電所も兼ねており、1層目はトイレの使用や変電所の荷重に耐えれるような鉄筋コンクリート造、2層目は変電所とトイレの吹抜の木造になっています。屋外の公衆トイレの問題としてやはり清潔感の問題があります。天高を5.2mとし光を取り入れ上層部を視覚的にインテリアのような内装にすることでることで明るく清潔感のあるトイレを演出しています。またトイレゾーンと洗面ゾーンに応じて2層の吹抜をそれぞれ仕切ることで、臭気が洗面に漏れ出さない工夫がなされています。

トイレ内観 巾木はタイル