今回は丹下健三氏設計の「国立代々木競技場」を詳しく見てみる、ということで見学した時の様子をご紹介したいと思います。

基本情報

所在地〒150-0041 東京都渋谷区神南2-1-1
アクセスJR「原宿駅」、東京メトロ「明治神宮前〈原宿〉駅」より徒歩3分
外観見学自由
内観見学事前に電話での予約が必要(詳しくは公式ホームページをご覧ください)
公式ホームページhttps://www.jpnsport.go.jp/yoyogi/

外観

まずは原宿門から外観の方を見学したいと思います。

門を入るといきなり建物の中に吸い込まれそうなエントランスがあります。

それもそのはず、建物の構造は吊り屋根構造になっており、2本の支柱と地面に張られたケーブルにより中央から屋根を吊り下げています。

当時からずれば、吊り構造というのは橋などに採用されたばかりの新しい技術でしたが、丹下さんはそれを初めて建築に採用しました。

建物はこのように、屋根が上下にスライドしたかのような梁屋根形状をしていることがわかります。ケーブルとずらしてできた隙間をエントランスにすることで、それぞれの方面から体育館へのわかりやすい導線を実現しています。

また地面へ張られたケーブルを見てみると、少し湾曲しているのがお分かりになられると思います。先ほどの包み込まれるような大きなエントランスは、このように真っ直ぐではなく少し曲げることにより、より大きな開口部を取ることができるようになり、来場者はこの吊り屋根の隙間に吸い込まれるように入っていきます。

さらに歩いていくと「プロムナード」と呼ばれる、第1体育館と第2体育館の間を縫うようにつき進むことになります。実際に訪れるとまるで自分が映画のシーンの中に入ったかのように、ふたつの建物の間の刻々と変化する景色を体験することとなるでしょう。

というのも、立ち位置によって、両建物を同時に眺めたり、片方ずつ振り返りながら見たり、歩いて常に変化する角度から建物を望んだりといったように。来場者はこのようにふたつの建物の関係から、今自分が立っている場所を常に確認しながら歩くこととなります。

実際にここを歩くと、忘れることのできない流れる映像のようなシーンを眺めることができるので、ぜひ訪れてみてください。

渋谷口から建物を眺めてみます。よくみると地中から空へと伸びる2本の支柱には、神社の屋根によくある「千木」のようなものが付いているのがお分かりになられると思います。

もしこれがついてなかったら、建物がこんなにも私たちの前に堂々と現れるような姿ではなかったでしょう。重力に逆らうように空へと伸びる2本の支柱は、当時では全く新しかった吊り構造により、軽々と屋根を持ち上げ大空間を実現しました。地面から空へと向かうようなこの日本の建築美が、この国立競技場にもたらされました。

エントランスの地面から伸びるるケーブルも、来場者は思わずその先を見ずにはいられません。

原宿口エントランス

続いて体育館の中の様子を見ていきたいと思います。

こちらは原宿口のエンタランスになります。カーテンで隠されてしまっておりますが、この先には圧巻の大空間が広がっています。

左のスロープは2階席への通路になっています。

第1体育館内観

こちらが今入ってきた原宿口です。

そしてその先には吊り屋根による大空間が広がっています。

写真からですとわかりづらいですが、実際に立つと、まるで自分がこの空間の中心にいるかのように、全体との一体感が半端ではありません。

自分が立っている位置から、景色が急にバッと広がるかのように遠くても体育館の床を間近に感じることができます。床を見ようとしなくてもつい視界に入ってきてしまうほどです。

反対側の奥まで、こちらまで一体に感じます。

では実際に床の方へ降りてみましょう。

こちらは渋谷口から原宿口を見た様子です。選手もおそらく、この全体に包まれた、声援や緊張感を観客席からそのまま感じ取ることができるでしょう。

選手も観客席の奥の方まで、より身近に感じることでしょう。

こちらは渋谷口方の様子です。

当時1964年のオリンピック水泳会場で使用された、電光掲示板です。この大きさでも場内によりわかりやすく存在しています。

こちらは関係者の入り口です。実は先ほどの「プロムナード」の下をくぐるように、選手や関係者はここを出入りできるようになっています。丹下先生はこのように構造だけでなく、来場者が感動するような仕掛けがたくさん仕掛けられています。

渋谷口エントランス

それでは反対の渋谷口に参りたいと思います。

エントランスに出る時は天井も空へと、クライマックスを迎えます。観客席からは天井が身近に感じ、観戦に集中しましたが、観戦を終えて余韻に浸った来場者は屋根の開放感とともに外の大きな空へと向かって会場を後にします。

2階席の観客者もここでスロープから合流します。

渋谷口エントランスです。原宿口とほぼ同じつくりをしています。

向こう側には第2体育館を望むことができます。丹下さんの建築はいつでも侮れないです。

渋谷門方から体育館を見る

こちらは渋谷門への階段から渋谷口を見た体育館です。一見単純な建物に見えますが、原宿門、北門そして渋谷門と、どの入り口からも見える景色は全て異なります。

まるで建物が反り返ったかのような、日本の社寺建築の屋根の反り返りを彷彿させます。どの角度から見ても日本の美が施されています。