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南洋理工大学 ラーニング・ハブ(The Hive)

基本情報
| 所在地 | 52 Nanyang Ave, Singapore 639816 |
| アクセス | Pioneer駅より、179番バス(SBS Transit)に乗車し、「Innovation Ctr」バス停で下車徒歩2分 |
| 開館時間 | 24時間 |
| 休館日 | 年中無休 |
| 見学方法 | 部外者でも立入可能 |
設計者
Heatherwick Studio(ヘザウィックスタジオ)
建築概要
「南洋理工大学 ラーニング・ハブ(The Hive)」は建築家トーマス・ヘザウィック率いるHeatherwick Studio(ヘザウィックスタジオ)の設計により、2015年に竣工しました。地上8階の講義棟で、1階のカフェやショップ、2階〜8階の56の教室と7階の図書館からなります。南洋理工大学キャンパス内にあり、後ほど紹介する伊東豊雄建築設計事務所+RSP ARCHITECTS PLANNERS & ENGINEERS設計の「南洋理工大学南校舎棟 “GAIA”」の隣に位置しています。
特徴は1階から8階の吹き抜けを中心に、細胞のような形をした教室や図書館がひだ状に外側に向かって広がった平面・外観が特徴です。吹き抜けと教室の間のスペースは吹きさらしの屋外になっており、椅子と机が置かれています。ひだ状のスラブが積み重なることで、中に入ると珊瑚礁の中に入り込んだかのように幻想的な風景が広がっています。
スラブはだた積層させているのではなく、中央の階(5階)がくびれています。そうすることで各階異なった風景を生み出しています。1階から5階まではすり鉢状にスラブが重なることで、中央の吹き抜けがまるでステージかのように求心力のある空間を生み出しています。1階に入った瞬間、まるで自分が建物の中心にいるかのように高揚感のある空間を生み出し、エントランスとしては最高の設計と言えるでしょう。

そして2階〜5階は吹き抜けに面した椅子・机のスペースに滞在することで、くびれたスラブが近景(目の前の本や人、隣の机の人)と遠景(下の階の人や1階のランチをしている人の風様子、上階の珊瑚礁のような美しいスラブの風景)を作り出し、大学でありながら不特定多数の中に紛れ込めるような居心地の良い集中できる環境を生み出しています。

5階〜8階はスラブが迫り出し吹き抜けが窄まることで、対岸の人との距離が身近に感じる一方で、足元に大きな地下空間が広がることで、近景の穴に大きな遠景の風景が広がる独特の開放感が生まれています。上階でスラブが窄まりシャープなトップライトが差し込むことで、建物全体でより非現実的な世界観を生み出しています。

またこれらは意匠的な説明だけでなく、環境的に合理的な設計となっています。地上のオープン広場(ピロティ)から取り込まれた涼しい外気が、建物内部で人の体温や太陽熱によって温められると、空気の性質で上層へ昇る煙突効果を狙っています。そのため居心地の良い上昇気流の風を生み出しています。スラブをせり出すことで、幻想的な光を演出しつつも太陽光による熱をカットしています。屋外でありながら、風や人の声が反響し、風景、音、光環境ともに熱帯地域ならではの居心地の良い「巣」がそこには広がっています。

南洋理工大学南校舎棟 “GAIA”

基本情報
| 所在地 | Nanyang Business School, 91 Nanyang Ave, Wee Cho Yaw Plaza, シンガポール 639956 |
| アクセス | Pioneer駅より、179番バス(SBS Transit)に乗車し、「Innovation Ctr」バス停で下車徒歩2分 |
| 開館時間 | 24時間 |
| 休館日 | 無休 |
| 見学方法 | 部外者立入可能 |
設計者
伊東豊雄建築設計事務所+RSP ARCHITECTS PLANNERS & ENGINEERS
建築概要
「南洋理工大学南校舎棟 “GAIA”」は伊東豊雄建築設計事務所+RSP ARCHITECTS PLANNERS & ENGINEERSの設計により2023年に竣工しました。主に南洋理工大学のナンヤン・ビジネス・スクール(Nanyang Business School / NBS、経営大学院)のメイン校舎として使用されています。先ほど紹介したヘザウィック・スタジオ設計の「ラーニング・ハブ(The Hive)」の隣に位置しています。
特徴は何といっても地上6階建、全長約210m、延床面積43,500㎡のCLT工法による木造となっており、アジア最大級の木造建築になっています。緩やかな弧を描く細長い形状で、中央の吹き抜けを中心に両側に廊下と教室、講義室、執務室、研究室などが配置されています。吹き抜けは建物の中央の3層吹き抜けと南北にそれぞれ2層吹き抜けのラウンジ、そして縦動線のEVシャフトを兼ねた中庭があります。ラーニング・ハブ同様、教室などの部屋以外のスペースは全て吹きさらしの屋外になっており、椅子やベンチが置かれています。


普段私たちを取り巻く建物の仕上げには化学的な素材が使われています。しかしCLTによる柱、梁(両側諸室の11.5mスパン、廊下の5mスパン、中央吹き抜けの11.5mスパンのみ金物が入った梁になっている)、床スラブの純粋な木による建物の構成は、人間という動物の本能に訴えかけるような温かみのある居心地の良い空間を創出しています。これほどのスケールで純粋な木造空間を実現した前例はほぼなく、建築史においても画期的な「木の柱梁フレームによる連続空間」と言えます。かつて西洋の教会が石の連続空間によって圧倒的な荘厳さを生み出したとすれば、ここでは木の色味が描くグラデーションを生み出しており、見たことのない柔らかな空間を実現しています。またどこか日本の伝統建築をも予感させる親しみやすさを与えています。

風が通り抜ける木に囲まれたラウンジは自由で野心的な交流の場を提供している一方で、その両側に面した現代的な教室は建設的で集中できる場を提供しており、熱帯の気候におけるキャンパスのメリットを最大限に発揮した建築であるといえます。CLTのラーメン構造による新たな可能性を示した建築でもあります。
共和理工学院

設計者
槇総合計画事務所
建築概要
共和理工学院はシンガポールの公立理系専門学校として2002年に創立されました。敷地面積210,000㎡の広大な土地に、建築面積72,409㎡、延床面積155,000㎡の15,0000人が通う巨大な大学キャンパスです。敷地は北側が小高くなっており、1階南側のエントランスから北側の2階にかけてスキップフロアになっています。さらに1・2階の上にはスキップフロアに沿うように1/30の傾斜をともなった人口地盤が架けられています。

1・2階は図書館を中心にその周りに、食堂や実験室を収めた教室棟のボリュームがバラバラに配置され、その図書館と教室棟の隙間として生まれたのが、1mの段差のステップフロアと天高3.6m〜12.0mで構成される「アゴラ」と呼ばれるスペースです。アゴラは11箇所の中庭が設けられ、場所によさまざまなスケール、照度の空間を生み出しています。ところどころに椅子やテーブルが置かれ、学生は各々の居心地の良い場所を選ぶことができます。


人工地盤より上は分棟の教室棟と芝生の広場で構成されますが、人工地盤の下はひとつの大きな屋根の空間を共有するように、分棟の教室棟がアゴラによってつなげられています。教室や研究室、実験室など、目的性の高い用途は、末端の部屋に辿り着きやすいようにエレベーターによる「検索性」を備えた高層棟(垂直)の構成になっている一方で、図書館や食堂、アゴラなど、学生同士の思いがけない交流や、授業時間以外の創作活動を促す空間は「遭遇性」を備えた低層の構成になっています。平面に展開することで、さまざまな天高を設定でき、設計の融通度の観点からも有利です。

「垂直のコアシステム」と「水平の街路のような展開」を、用途やクリエイティビティでそれぞれ構成されている点が、都市を体現した槇氏らしい設計になっています。これは大学キャンパスというビルディングタイプにとってとてもとても可能性のある構成であることがわかります。
ナショナルギャラリー シンガポール

基本情報
| 所在地 | シンガポール 178957 |
| アクセス | City Hall(シティ・ホール)駅(南北線 NS25 / 東西線 EW13)B出口より徒歩3〜5分 |
| 開館時間 | 10:00 〜 19:00 |
| 休館日 | 無休 |
| HP | メンテナンスや展示替えなどで休館の可能性 HPへ |
設計者
新築:A.ゴードン&F.D.メドウズ(旧市庁舎)、フランク・ドーリントン・ワード(旧最高裁判所)
改修:Studio Milou(スタジオ・ミロー)
建築概要
ナショナルギャラリー シンガポールは、Studio Milouの設計により、2015年に竣工・オープンしました。もともとイギリス植民地時代に建てられた市庁舎(1929年)と最高裁判所(1939年)を、保存・活用を目的にナショナルギャラリーへと改修がなされました。特徴は2005年の最高裁判所の移転を機に両建物を1つの「美術館」へ統合する試みがなされたことです。両建物のさらに外側には近代的なトラスの大屋根が架けられ、旧建物の屋根の上や両建物の間のスペースが内部空間化されました。また地下には新たに両建物を貫通するコンコースが設計され、美術館全体の回遊的な動線になっています。

内部空間化された両建物の間のスペースはエントランスホールとして開放的な空間になっています。天井は樹木の隙間の表情を模したアルミパンチングの仕上げになっており、ガラスのトップライトの光を美しく和らいでいます。大屋根を支える中央の柱も樹木を模した形状とすることで、建築部材としてではなく「大空間の中のオブジェ」として扱われ、視覚的に邪魔な存在にならずに大空間の中の象徴的存在として溶け込んでいます。また床や壁の内装が仕上げられた内部空間に、ファサードのコリント式の列柱がインテリアとして立ち現れることで、普段外で見るよりもよりもより身近な存在となり、圧倒的な重厚感を感じることができるようになっています。さらに両建物の間にはブリッジがかけられ、普段見ることができない角度・高さで近づけるようになっています。

旧市庁舎の中庭はガラスの屋根がかけられ、内部空間化しました。木突板の仕上げになっていますが、内部とは思えないトップライトによる照度によって、屋外なのか屋内なのか錯覚してしまします。「青空の下にある室内」という不思議な空間が訪れる人を引き寄せます。

既存建物の地下・間・上空を美術館のホワイエ空間として利用することで、文化財を傷つけない改修としてとても可能性のある手法を提示しています。また既存建物との新たな関係性・空間を生み出しており、既存建物を大きな展示室の箱の中に入れたかのように、建物自体が1/1の展示品・インテリアのように扱われることで、普段屋外で見る新古典主義の建築の威厳さを何倍にも増して感じることができます。既存建物の現代用途に転用する新たな設計手法の可能性を提示した作品です。
ザ・ショップス アット マリーナベイ・サンズ

設計者
サフディ・アーキテクツ(Safdie Architects)
建築概要
ザ・ショップス アット マリーナベイ・サンズは世界的なラグジュアリーブランドやレストラン、カジノ、国際会議場、劇場を内包する複合高級ショッピングモールです。2005年、当時のシンガポール政府は、伸び悩んでいた観光客を呼び戻すため、それまで禁止していた「カジノ」を含む統合型リゾート(IR)の建設を決定します。コンペの結果、アメリカのラスベガス・サンズ社が開発ライセンスを獲得しました。総建設費・土地代は約S$80億(当時のレートで約5000億〜6000億円)にのぼり、「世界で最も高額な独立型カジノリゾート」と言われました。本来は2009年の全面開業を予定していましたが、2008年リーマンショックで、資材費の高騰や深刻な労働力不足に見舞われました。遅れを取り戻すため段階的にオープンさせる手法をとり、2010年4月27日、カジノやホテルの一部とともに、「ザ・ショップス」の主要エリアが遂に一般公開されました
ショッピングエリアは長さ400m、高さ25m〜30mのリニアなアトリウムに、長さ100mのアトリウムがT字に2箇所伸びる構成になっており、広大でありながら地下2階から地上3階まで視覚的に繋がり迷わない設計になっています。100mアトリウムの地下2階は運河が張り巡らされており、ショッピング動線には邪魔な存在ですが、運河沿いにレストランが並ぶことで、室内でありながら、運河を見物しながら食事できる路上のような滞在空間を生み出しています。

特徴はなんといっても、リニアなアトリウムのスケールと、高揚感あるショッピング空間でしょう。地下2階から地上3階まですり鉢状にブランド店が軒を連ねることで、地下2階の人はブランド店が上空に広がっているように見え、まるで自分がランウェイを歩くかのように、アトリウムの中心にいることを感じさせる空間になっています。地上にいる人は、目の前に見える谷底のブランド店とその先に広がるアトリウムの遠景が同時に広がり、ブランド店が永遠に続いていることを感じさせるような夢のような空間を生み出しています。ショッピング空間として気分をMAXにしてくれる設計がなされています。


Apple マリーナベイ・サンズ

設計者
フォスター+パートナーズ(Foster + Partners)
建築概要
Apple マリーナベイ・サンズは、「ザ・ショップス アット マリーナベイ・サンズ」のテナントとして2020年にオープンしました。マリーナ湾の水上に建てられ、直径30メートルの球体ドームの構造で、114枚のガラスと縦の垂直マリオンで構成されています。ザ・ショップスとは水中の地下連絡通路でつながれアトリウムに直結しています。3次元局面によるガラス張りの店内は、現実世界とは思えない無菌室のような美しい室内を生み出しています。まるで完璧なプロダクト製品のような建築です。

チリひとつないガラスは視覚的にヌルヌルな表情を与え、360°マリーナ・ベイの景色をノイズなく店内に借景しています。店内のEVシャフトや大型ディスプレイは鏡張りになっており、まさにAppleの現実世界とサーバー空間が滑らかに融合する世界観が建物全体で表現されています。
