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基本情報
| 所在地 | 〒639-0231 奈良県香芝市下田西2-8-1 |
| アクセス | ・「近鉄下田駅」より徒歩8分 ・JR「香芝駅」より徒歩5分 |
| 見学方法 | 要事前アポイントメント |
Good Job ! Center KASHIBA
Good Job ! Center KASHIBAは就労支援施設A・B型事業所、生活介護事業所として2016年に竣工しました。1970年に、障害のある人の居場所や生活拠点として奈良たんぽぽの会(現・たんぽぽの家)が発足し、2004年からは日本初の障害のある人のアートセンター「たんぽぽの家アートセンターHANA」を開設し、これまでに芸術による自己表現を支援してこられました。2016年から個性の創造性を生かしたアートやデザインによる本格的な仕事の開発拠点として、奈良・香芝でGood Job ! Center KASHIBAが開設されました。2013年末から2014年初めにかけて実施された公開の建築設計プロポーザルによって、大西麻貴+百田有希/o+hの案が採用されました。
銀行を挟んで南棟と北棟から構成され、両建物は同じ街区内にそれぞれ角地に建っています。南棟は地上2階建で主に利用者が使う工作スペースとスタッフの事務スペース、外部の人が利用可能なカフェやショップからなります。北棟は地上1階建、主に工作スペースや、静養室からなり、どちらも木造です。南棟は建物の規模・開口が大きく設計され、さらにカフェやショップなどの用途によって外部に対して開かれた建物ですが、北棟は、スケールも小さく、開口部が比較的閉鎖的でこじんまりとした佇まいになっています。両建物の性格を分けることで、利用者の性格やその日の気分に応じて建物の環境を選択できるようになっています。
南棟

南棟は建築面積311.84㎡、延床面積471.17㎡で建物高さは6.8mです。建物全体が市松状の耐力壁で構成されており、建物の内外を仕切るだけでなく、室内の巨大なワンルームをいくつかのスペースへと緩やかに分節しています。
市松状の外壁が生み出す「付かず離れず」の視線
外壁部分では市松の壁が腰壁や垂れ壁として立ち上がり、さまざまなスケールの開口部を生み出し、さまざまな角度で外の景色を切り取っています。実際に、街の風景の中に宙に浮かぶ近景として壁面が立ち現れるとともに、腰壁に沿って配置された什器が利用者を包み込み、外部からの適度な遮蔽感と開放感を両立しています。外の視線を気にせず集中しながら、ふと視線を上げればまちの風景を感じられる、心地よい作業環境を実現しています。まさに「市松」という外壁システムは、利用者にとって街との「付かず離れずの」関係を構築するのに有効的に機能しています。

さらに、このシステムは室内の人間関係にもポジティブな影響を与えています。私たち人間は完全に密閉された作業スペースでは他の人同士の視線や存在感が過剰に気になり、作業に集中しづらい側面があります。就労支援施設という環境ではなおさらです。しかし、開口部を通して街の風景や外部の視線が室内に浮かび上がることで、内部にいた視線の矛先が自然と外へと分散します。不特定多数が存在する「街の広がり」を室内に取り込むことで、利用者同士の間にも心地よい心理的距離感を生み出しています。
心理的距離感を保つ空間構造
室内の巨大なワンルームも市松状の壁によってゆるやかに分節されています。角地に建つ建物は外部の人が訪ねやすいように、道路沿いのエントランスや事務スペース、カフェ、ショップは2層の吹き抜けになっています。1階と2階はそれぞれ吹き抜けに面するように敷地の奥に天高の低い作業スペースが展開しています。エントランスホールは利用者の作業スペースと街の交差点との緩衝地帯となることで、街と作業スペースが一定の距離を保ち平面的に緩やかにつながる計画となっています。

カフェでは外部の人でもコーヒーやホットドッグの食事を楽しむことができます。ショップでは利用者の方が制作したグッズやアートを購入でき、メーカーや職人、アーティストと共同した作品も多数販売しています。


ワンルームの遠くを見渡す視線をところどころ市松の壁が遮断しています。壁は近景と遠景を生み出し(壁に包まれた手元の集中できる作業環境と、ふとした時に遠くに目線をそらせるようになっており)、雑多な壁のシステムの中に不特定多数の居場所を見出せるようになっています。完全に密閉されてしまえば隣の人の存在が気になりますし、逆に完全なワンルームになってしまうと自らの心地よい環境を選択できなくなってしまい、逃げ場がなくなってしまいます。特に配慮が求められる就労支援の現場において、この課題は重要です。作業スペースからは所々エントランスホールに視線が抜け、外の人の気配を感じることができるようになっています。外部と完全に繋がりが遮断された施設ではなく、実際に接客や会計などを通じて外部の人と緩やかにつながる環境が整えられています。

2階は主に外部の人が購入可能なショップと作業スーペース、利用者の方がパソコン作業をするスペースになっています。パソコン作業は主に売り上げの事務作業や商品の検品、デジタルーアートやポスターの制作を行っています。2階は1階に比べて室内の市松の壁量が少く内部で開放的な空間になっています。その代わり1階の気配を感じたり、ワンルーム全体や音を聴きながら作業したり、1階を見下ろしながら作業できる環境になっているので、1階の雑多な環境から切り離されつつも、それをある一定の距離から様子を伺いながら作業できる居心地の良い場所を生み出しています。

2階は交差点に対して壁量が多く、街に対して視覚的に閉鎖的になっています。その代わり天井には所々ハイサイドライトを取り入れるスリッドが設けられています。1階が「街への水平方向の抜け」であるのに対し、2階は「光による垂直方向の抜け」があることで、1階から切り離され、守られた環境でありつつも開放的で明るい照度の空間を保っています。

北棟

北棟は平屋となっており、ホールとアトリエ、静養室が壁によってプランニングされています。敷地は緩やかな斜面地となっており、建物内に緩やかな段差が生まれています。道路側に縁側が設けられ、室内の段差によって道路を見下ろすように室内から屋外を見通すできるようになっています。天高も 2.6m〜3.8mと低く抑えられ、アトリエとして仕上げも白く、落ち着いた雰囲気になっています。


就労支援施設
従来の就労支援施設といえば、利用者の作業内容として単純作業や事務作業が多く、建物も外部から独立し、外部の交流やつながりの希薄な閉鎖的な環境になりがちです。「施設」としての側面がどうしても強くなってしまいますが、Good Job Centerでは利用者が自らが選択的に創造的な仕事をする環境が整えられています。「福祉施設」には見えず、街中のカフェのような空間が広がっています。市松の壁は空間的・覚的に多様なシーンを生み出していますが、空間全体を構成する壁沿いに机や棚、3Dプリンター・レーザーカッターなどの機械が置かれることで、市松の壁はこれらの多種多様な什器の雑多な風景をまとめている役割も担っています。程よい多様な居場所・シーンを生み出しつつも、利用者がどこに何が置いてあるかが一目でわかりやすいように、什器を視覚的に整理しているということです。
このような挑戦的で野心的な就労支援施設が広まることを願うばかりです。
