北海道の建築めぐり/おすすめ有名建築一覧【5選】!

北菓楼札幌本館

左上:2階レストランより吹き抜けを見渡す 右上:打ちっぱなしのコンクリートで補強された外壁内部 左下:2層分の本棚 下真中:旧玄関ホール 右下:1階より3層吹き抜けを見上げる, 天井は白い交差ヴォールトとなっており新旧の対比を強調する

基本情報

所在地〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西5丁目1-2
アクセス・JR「札幌駅」より徒歩5分
・地下鉄「大通駅」5番出口より徒歩5分
営業時間1F店舗:10:00~18:00
2Fカフェ:11:00~17:00(ラストオーダー 16:30)
休館日1月1日
HPhttps://www.kitakaro.com/ext/tenpo/sapporohonkan.html

設計者

萩原淳正、久保田金蔵、安藤忠雄建築研究所、竹中工務店

建築概要

北菓楼札幌本館」は「北海道庁立図書館」として萩原淳正氏と久保田金蔵氏の設計により1924年に竣工し、1967年まで使用されたました。その後は「北海道立美術館」、「北海道立三岸好太郎美術館」、「北海道立文書館別館」と用途を変遷しましたが、2016年3月安藤忠雄建築研究所と竹中工務店により、北海道のお菓子メーカーである北菓楼の店舗・レストランとしてオープンしました。

1980年ごろから建物はあまり有効活用されなくなり、北海道庁は建物を維持・保全するために、所有する建物を民間企業に売却する事業ペティションを開催しました。結果北菓楼グループが選定され、今では街の魅力的な価値のあるレストラン・店舗として竣工当時の賑わいを取り戻しています。

既存の建物は地上4階建てのレンガ造鉄筋コンクリート造で、ファサードはジャイアントオーダーと呼ばれる2階分のオーダー(柱)となっています。改修は、通りに面した南と西側の2面外壁と玄関ホールのみを残し、それ以外は取り壊し新たに新築としました。特に南側の大通りに面した外壁は、内部に15mの鉄筋(Φ75mm)を配筋し、鉄筋コンクリートの壁・梁を裏打ち、さらに鉄骨の柱を内部に挿入することで、90年経過した外壁の補強としています。

天井を白い交差ヴォールトとすることで、時間の経過とともに味を出しているレンガ造壁と新な鉄筋コンクリートの対比をより際立たせており、保存壁側を3層の吹き抜けにすることで、壁を空間全体のインテリア内装としています。また建物の入り口も従来の玄関ホールを閉鎖し新たに東側に設けたエントランスをアプローチにすることで、来館者は既存の威厳ある建物雰囲気に囚われずに、客観的に既存躯体をインテリアとして認識することができます。

脱皮した外皮をそのままに中身を新陳代謝することで、街に対しては歴史的な景観として継承するとともに、内部では安藤氏のならではの”対比”を用いることで、既存躯体をインテリアとして仕立て上げ、新しい用途にうまく対応した「再開発」と言えるでしょう。

ガラスのピラミッド "HIDAMARI"

左上:

基本情報

所在地〒007-0011 北海道札幌市東区モエレ沼公園1-1
アクセス・地下鉄東豊線「環状通東駅」より「東69あいの里教育大駅」行・「東79中沼小学校通」行バスに乗車し、「モエレ沼公園東口バス停」下車
地下鉄東豊線「環状通東駅」「東61中沼小学校通」行バスに乗車し、「モエレ沼公園西口バス停」下車
・地下鉄南北線「北34条駅」より「東76中沼小学校通」行バスに乗車し、「モエレ沼公園西口バス停」下車
開放時間4月29日~11月3日:9:00〜18:00
11月4日~4月28日:9:00〜17:00
休園日4月29日~11月3日:毎月第1月曜日
11月4日~4月28日:月曜日
HPhttps://moerenumapark.jp/

設計者

川村純一、堀越英嗣、松岡拓、公雄、城戸崎博孝、寺沢任弘、森本智博、鈴木理、横河建築設計事務所札幌事務所

建築概要

「ガラスのピラミッド "HIDAMARI"」

真駒内滝野霊園頭大仏

基本情報

所在地〒005-0862 北海道札幌市南区滝野2
アクセス・地下鉄南北線「真駒内駅」より真106バスに乗車し、「滝野峠バス停」下車徒歩3分
・地下鉄南北線「真駒内駅2番のりば」より真108バスに乗車し、「真駒内滝野霊園バス停」下車
開殿日4月~10月:9:00~16:00
11月~3月:10:00~15:00
閉殿日メンテナンス日
※天候等の影響により閉殿する場合がございます
HPhttps://www.takinoreien.com/

設計者

安藤忠雄建築研究所

建築概要

「真駒内滝野霊園頭大仏」は札幌市南区の真駒内滝野霊園の石造大仏の礼拝空間として2015年12月に竣工しました。霊園は札幌郊外の高台に位置した自然豊かな場所となっており、霊園の総面積は180haと、道内最大規模の墓地となっています。園内には他にもモアイ像やストーンサークルなど多くの石造モニュメントが点在しており、親しみのある霊園となっています。

その中でも高さ13.5m、総重量1,500の大仏は2001年に造成されましたが、当初は平地に鎮座しているのみで、今ほど注目度は高くはありませんでした。そこで安藤忠雄氏の構想により、大仏を上底の直径13.72m、下底の直径27m、高さ10.55mの円錐台形状のコンクリートで囲み、さらにその周りに土を被せました。結果、丘のてっぺんから2.95m上に顔を出した「頭大仏」となり、今では世界中からも多くの礼拝者が訪れます。

丘にはラベンダーが植えられ、7月ごろには山一面が紫で覆われたを見ることができます。礼拝空間までは長さ134mの一直線のアプローチに、長さ40mのトンネルを掘ることでアクセスすることができるようになっています。またアプローチの開始から68mの地点には長さ57mの水庭が垂直に交差しており、水庭の両脇には直径18mのレストランと関係者設備がそれぞれ配置されています。丘とその背後にそびえ立つの恵庭岳の風景の中に浮かぶ大仏の頭に向かって、一直線に伸びる幾何学的な配置計画が、その先に待ち構える礼拝空間に期待感を寄せつつも、ある種の緊張感のある対立関係を生み出しています。

礼拝空間は、中央に六角形の土台とその上に天井開口と同じ直径13.72mの基壇が載っており、周囲は歩行可能な回廊となっています。60度内側に傾いた壁は私たちの視線を上に仕向けさせ、空に向かって鎮座する大仏の厳さを体感することとなります。北海道の壮大な大地の中に周りを遮断され不動の大仏と対峙する空間は、私たちをちっぽけな存在だと思い知らされつつも、その先にどことなく広がっている空を見て、遠く離れた場所のことや、自分や人の未来や過去について想像力を働かせずにはいられないでしょう。

このように後から大仏の周りに被せたコンクリートは私たちを上空にしむけ、現実から想像の世界へと没入させるバーチャル装置なのです。

岩見沢複合駅舎

基本情報

所在地〒068-0034 北海道岩見沢市有明町南
乗り入れ路線JR函館本線
HPhttps://www.jrhokkaido.co.jp/network/station/station.html#79

設計者

ワークヴィジョンズ

建築概要

岩見沢駅は道内最古の鉄道である「幌内鉄道(1882年札幌〜幌内館開業)」の駅として1884年に開業しました。その後も当駅から北は砂川・歌志内へ、南は苫小牧・室蘭方面へと延伸開業を経て、幌内炭鉱や空地炭鉱(歌志内市)からの室蘭・苫小牧の港への石炭輸送を担う主要機関庫として栄えました。その後は炭鉱の閉山、国有化、国鉄民営化を経て、現在では札幌から旭川方面への主要旅客駅としてその役割を担っています。

現在の駅舎は2005年に駅舎では全国で初めての公募型コンペにて設計者の選定が行われ、2007年に新駅舎として開業しました。建物は駅舎としてだけではなく、市民サービスセンターや市民ギャラリーが併設されたほか、同時に駐輪場や跨線橋も一体的に整備されました。駐輪場、跨線橋は寒冷地のため室内となっており、長い跨線橋は住民がウォーキングにも使用するなど公共建物でもありインフラストラクチャでもあります。

建物は地上3階建ての鉄筋コンクリート造で、1階部分の外壁にはレンガが仕上げられ、一部は透かし積みレンガ壁となっています。また近くには明治時代から現在でも鉄道レールの製造を行う「岩見沢レールセンター」があり、レールの地らしく2、3階の周囲を囲うカーテンウォールのマリオンには古レールが使用されています。

寒冷地においてガラス張りの建築は空調効率的に大きな損失となってしまいますが、本建築では内部のレンガ仕上げの部屋と、2〜3層吹き抜けのコンコース・ホールなどのカーテンウォールによる「ダブルスキン」とすることで、レンガ箱とカーテンウォールの間の共用部が熱環境的に保護され、居室内は通常よりも空調効率を高めることができます。特に晴れた日は全面ガラスによる直射日光が共用部に注ぎ、自然の力で適切な熱を室内に保ことができます。

またコンコース・駐輪場・跨線橋内壁はスギ板本実型枠による打ち放しコンクリート仕上げになっており、北海道の大地に相応しいコンクリートの力強さを感じます。外観が透明でありながらも不動なレンガの箱と打放しのコンクリートによる素材感が、雪国の中で人や街に開かれつつも建物に対して頼もしさを感じます。

旭川駅

基本情報

所在地〒070-0030 北海道旭川市宮下通8-3
乗り入れ路線JR函館本線、宗谷本線、富良野線、石北本線
HPhttps://www.jrhokkaido.co.jp/network/station/station.html#84

設計者

内藤廣建築設計事務所

建築概要

旭川駅は1898年、北海道官設鉄道上川線の駅として開業しました。現在はJR函館本線、宗谷本線、富良野線、石北本線が乗り入れています。2010年10月に本駅を中心に約3.5kmにわたって高架化され、それと同時に4代目となる本駅舎が一次開業、2011年11月に全面的に開業しました。設計は内藤廣建築設計事務所によるもので、1990年より続く駅周辺の土地区画整理事業の一環として、鉄道高架化や新駅舎の建設、駅前広場、近くを流れる忠別川の3本の橋、合同庁舎、複合施設などあたり一体が同時に整備計画されました。

駅舎は高架下1、2階のコンコースと3階のプラットホームで構成されており、ラーメン構造の高架基壇の上に屋根を支える四叉柱が乗っています。ホーム屋根はトラス梁により構成されており、ディーゼルカーの排煙による黒ずみが目立たない鉄骨梁とデッキプレート現しの天井になっているのに対し、それを支える20ヶ所に配置された四叉柱は白いフッ素樹脂塗装仕上げになっており、ホーム全体に統一感を持たせています。

コンコース内壁は道産タモ材による板材仕上げになっており、ダイニングテーブルやソファなどの旭川家具が置かれた「旭川ラウンジ」が設置されるなど、駅にもかかわらず温もりのあるインテリアとなっています。国や道、市、JRなどさまざまなステークホルダーの中で15年間という長い時間が生成したデザインは、流行り廃れのないゆったりとした空間が広がっており、現代の経済効率性を考える上で長きにわたりそこに佇むことで、短期的な投資回収により成り立つ質素な空間ではなく、長きに愛され多くの人にとって記憶に残るような玄関口として役割を担うことでしょう。