伊東豊雄氏設計、美しい曲面屋根の市営斎場【瞑想の森】をご紹介します。

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基本情報

所在地〒504-0009 岐阜県各務原市那加扇平2-5
アクセス・JR高山線「那加駅」より徒歩40分
・名鉄各務原線「新那加駅」 より徒歩40分
見学可能時間9:00~9:30の30分間
※見学時間外は外観見学もご遠慮ください、3人以上で見学される方は、見学する1週間前までに見学申請書をメールまたはファックスで送信してください
休館日
1月1日
HPhttps://www.city.kakamigahara.lg.jp/shisei/shisetsu/1005485/1005496/1005498.html

自由曲面屋根の市営斎場

市営斎場「瞑想の森」は、老朽化した旧斎場の建て替えとして2006年に伊東豊雄さんの設計により完成しました。建物全体が曲面シェル構造の鉄筋コンクリート屋根に覆われ、美しいランドスケープ景観を生み出しています。

厚さ200mmのコンクリートシェルが大小様々な凹凸をなす

曲面のは斎場の各諸室に適当な天井高さを与えて、その点を結んで構成されています。「炉室」の11.56mが最も高く、「待合室」は畳の和室は低め、椅子に座る洋室は高めになっています。また池の向こうから建物を眺めたとき立面的に手前は低く、山側の奥は高くなっており山の景観と連続性をもたせ建物の奥行き感を出しています。

屋根の凹凸で奥行き感を出し、背後の山と一体的な風景をなす

曲面屋根は4箇所の耐力壁のヴォリュームと12本の柱によって支えられています。また柱の中にはドレインが通されており、必ず柱に雨水が集まるように傾斜が設けられています。

そのため柱と天井は入角の境目のないR仕上げになっており、曲面の断面形状に合わせてはめ込まれたガラスから室内にめいいっぱい自然光が入り込み、白く柔らかく包まれたようなあいまいな空間が、目の前の景色に限りなく溶け込みます。

通常天井と壁の境に生じる直線の入角はR仕上げの一体な仕上げになっており、柔らかな空間が目の前の景色に限りなく一体となる
出典:新建築

エントランスホール

車寄せとエントランス

斎場の動線は決められているので、各諸室により決定された曲面の形状は必然的なものといえます。

奥が事務室、右奥の扉は告別室
床と告別室、収骨室の壁には大理石のトラバーチンを使用

エントランスホールには「事務室」と「告別室」・「収骨室」が面しています。告別室・収骨室の壁と床のコーナー部分は削り出してRが描かれており、床と一体的な見た目になっています。天井からも独立しており、大地からそびえ立つボリュームにも見えます。

壁、床の角は削り出してR仕上げにし、床と一体的なヴォリュームをなす

告別室 

炉前ホール

炉前ホールのガラス下部は半透明のメタリック塗装のルーバーで目隠ししています。

左側が告別室と収骨室、右側が炉室

天井高が高く外部の空間性もたせつつも、落ち着いた空間になっています。

池を望む、炉室のヴォリュームは曲面屋根と一体となり屋根を支える

待合ロビー

待合ロビーは景色が大きく見えるように、柱をなるべくなくし天井高を確保しています。

奥が待合室

待合室

待合室は和室1室、洋室2室あり、和室は和室のスケールに合わせて屋根が低く抑えられています。

左に待合室、写真右側のドライエリアの耐力壁が屋根を支える
座椅子の和室は景色の前に柱を配置し、天井高が抑えている
洋室1
洋室2

収骨室

新しい近代建築の形態

斎場の諸室は、全体の屋根の下に置かれた家具のように配置されることで、家具の合間を縫って抜けていく床と天井曲面屋根の広がりは豊かな余白空間として、限りなく目の前の景色と一体となります。

まさに家具であいまいに空間が仕切られていた日本家屋がもとになっています。