全面ガラス張りの公民館「鬼石多目的ホール」をご紹介します!妹島和世設計 群馬県藤岡市

群馬県鬼石市に建築家の妹島和世さんが設計した公民館、「鬼石多目的ホール」についてご紹介したいと思います。

群馬県内の建築は下の記事をご覧ください!

基本情報

所在地〒370-1401 群馬県藤岡市鬼石158
アクセス「新町駅」より日本中央バス奥多野線「万場行」に乗車し、「本町バス停」下車徒歩7分
見学時間9:00〜17:00
休館日月曜日(休日の場合翌日休館)
ホームページ藤岡市ホームページ

フラクタルな曲線が生み出す曖昧な建築

出典:新建築

鬼石町は2006年に藤岡市との合併に伴い今はなくなってしまいましたが、当時は人口7000人ほどの小さな町です。周囲は山々に囲まれ、非常に自然豊かな場所です。

敷地は旧中学校跡地で、2003年に行われたコンペティションにより妹島和世さんが設計を担当することになりました。建物は体育館棟、ホール2棟、管理棟の3棟からなる分棟で、スポーツ・文化活動を目的とした市民会館です。

建物の特徴は、建築全体が不規則なガラス曲線で構成され、屋内にいるにもかかわらずまるで外にいるような空間になっています。透明度の高い建築なのでガラス越しに屋内の様子も眺められ、限りなく鬼石の景観に溶け込んでいます。

曲面ガラスで構成されたホワイエ、ガラス越しに屋内の様子と周囲の景色を望むことができる
ガラス張りの解放的なホワイエが鬼石の景観と限りなく一体となる

「ホール2棟」は多目的ホール、ホワイエ、エントランスからなり、曲線によってそれらが完全に仕切るのではなく、空間に奥行きを持たせることで透明ながらもそれらを分けています。すると活動の様子が建物内に響き渡り、自由度の高い建築になっています。

ホール、ホワイエ、エントランスの中間スペース(奥にホワイエ)、フラクタルな曲線と屋外通路を挟んだ分棟配置により、建築の屋内外を同時的に体験できる空間となっている
左側にエントランス、右側にホール2

体育館

建物全体は4mほどの平屋で構成されていますが、天井高さが伴う体育館と多目的ホールは地面から掘り下げています。そうすることで建物の高さを抑えることができ、鬼石の景観を損ねないようにしています。

高さ4mの平屋が周囲の景観に限りなく溶け込む

体育館のスパン20mの梁は、地元のスギ材と鉄のハイブリッド材が使用されています。半地下の温かみのある体育館になっています。

体育館の必要天井高さに合わせて、地面から3.5m程掘り下げる

ホール2(多目的ホール)

多目的ホールも地面から掘り下げられています。多目的ホール横にはスロープが設けられ、別棟の体育館とは地下の通路で結ばれているので、車椅子の方でも下に降りることができます。

多目的ホールの椅子は収納可能で、様々な用途に合わせて使うことができます。

地面から2.3m掘り下げる
椅子は収納可能で、卓球スペースとしても使用できる

建築の対立をいかに和らげるか

建築には必ず対立が生じます。特に近代建築の対立問題とは内と外の問題です。近代建築には室内を機能によるコントロールが求められるため、昔の日本家屋のような曖昧な屋内外の関係性をいかに取り戻すかが最近の建築家の大きな課題にもなっています。

また公共建築は利用者と、それを管理する必要があるため、管理者にとっていかにそれをしやすいかがもとめられます。本建築は透明度、奥行のある空間、諸室の掘り下げによってそれらの問題をクリアに解決しています。