まるで公園のような新しい美術館!SANAA設計【金沢21世紀美術館】をご紹介します!!石川県金沢市

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基本情報

所在地〒920-8509石川県金沢市広坂1-2-1
アクセス・路線バス「香林坊(アトリオ前)バス停」より徒歩約5分
・まちバス「金沢21世紀美術館・兼六園(真弓坂口)バス停」下車すぐ
・城下まち金沢周遊バス「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)バス停」下車すぐ
開館時間・展覧会ゾーン10:00~18:00(金、土曜日は20:00まで)
・交流ゾーン 9:00~22:00 
休館日・展覧会ゾーン:月曜日(祝日の場合翌日休館)、年末年始
・交流ゾーン:年末年始 
※各施設の休室日は展覧会ゾーンに準じます
入館料建物への入館(交流ゾーン):無料
展覧会ゾーン:一般:450円、大学生:310円、高校生以下:無料、65歳以上:360円
ホームページhttps://www.kanazawa21.jp/

◯+■の複雑さ

「金沢21世紀美術館」は妹島和世さんと西沢立衛氏による建築家ユニットSANAAによって設計され、2004年に竣工しました。建物周辺は兼六園や迎賓館、緑地公園、市役所、美術館に囲まれた、金沢の中心地で魅力のある場所です。

建物は有料エリアの美術館(展覧会ゾーン)のほかに、市民ギャラリーやレクチャーホール、シアターホール、図書室などの誰もが無料で入れる交流ゾーンからなり、観光客や市民など誰もが気軽に利用できる複合型施設になっています。

ガラス張の図書室

建物は、17の大小様々な四角いヴォリュームと4つの中庭で構成され、それらは直径113mの円形のガラスにより囲まれています。

出典:新建築

美術館の展示室は円の中央を中心に点在して配置されているのに対し、それ以外のギャラリーなどは円形ガラスの内側に沿ってそれぞれ配置されています。全て同じ水平方向に同じような並びで点在している17のボリュームとガラス張の諸室配置は、結果街の街区のような隙間を生み出し、同心円状に広がる建物周りの広場、さらにはその先の実際の敷地周辺の公園や街区に向かって、建物内外が360°連続したランドスケープを生み出しています。

■による街区が◯のガラスにより、周辺環境と360°同心円上に広がって連続するランドスケープを生み出し、誰もが四方から気軽に立ち寄れる美術館である

また建物内に生まれた街区のうち、建物を端から端まで見通せる一直線の通路が5箇所引かれ、建物越しに周辺環境を望むことができ、ガラス張りの建物が周辺風景に限りなく溶け込んでいます。

通路越しに建物内を見通せる

このように単純な図形の組み合わせ配置にもかかわらず、新しく訪れた観光客や地元市民向けに、たくさんのひと達が気軽に訪問し利用できるような豊かな空間をつくり出しています。

建物の内外が視覚的に周囲の広場と連続し、ヴォリューム壁面の展示物も訪れた全てのひとに対し、誰もが気軽に鑑賞することができる

17のヴォリュームの内7つは展示室として利用され、美術館は「展示室1〜14」の14の展示室からなります。最も天井高の高い展示室で15mほどあり、展示する作品によって大小ざまざまな展示室があります。

ホワイトキューブ内部

展示室同士をつなぐ動線は、ヴォリュームの隙間によってできた街区(通路)で結ばれていますが、展示内容によって異なる展示室の数や動線を自由にコントロールできるように、あらかじめ開閉可能なガラス引戸で仕切られています。

無料で入れる交流ゾーンより撮影、右のガラス仕切りは開閉可能で、仕切り内は有料の展覧会ゾーンとなっている

そうすることで企画内容によって臨機応変に対応できるほか、どこまでが美術館エリアなのかと、会期によって変化する美術館のゾーニングが市民エリアとの曖昧な関係性を築いています。

展覧会ゾーンより撮影、臨機応変に開閉できる大きなガラス引戸は美術館と市民エリアを曖昧に混在させる

またガラス引戸越しに美術館を垣間見れるので、21世紀美術館が本当に誰にでも開かれたオープンな美術館であることがわかります。

光庭を貫くガラス通路、建物越しに向こうの街の景色を望める
光庭、自然光の利用や完全屋内など、現代アートの展示形態は様々である、他の展示室に移動する際に屋内外を同時に体験できる

絶対的な水平性

1階共用部(ヴォリューム以外の街区部分)の円形軒の高さは4.3mのオールフラットで床も全てがフラットになっています。天井高を必要とする展示室ヴォリュームは円形の中央寄りに配置されているため、周囲に対して圧迫感を与えず、どの方向から見ても建物は同じような立面で見え、建物の正面という概念を無くすことに成功しています。

建物の裏表がない立面

細長く横に続く建物の立面は同心円状に周囲につながりを求めるように、広場と敷地周辺と連続したランドスケープを生み出すために、一部の市民ギャラリーや広さがともなう駐車場は完全に地下に埋められています。

地下と視覚的につながるヴォイド空間
地下に明るい自然光が降りそそぐ

このように絶対的な水平性を築き上げることで、内部空間を規定する床が四方のランドスケープに無限に広がるような、表裏一体の関係性を築き上げています。

それは四角やフラクタルな曲線による床スラブが限りなく虚空に消えていくような、建築家の描くイメージにとどまることなく、本建築は円形の抽象的なガラス素材により、円がもつ同心円的な広がりの性質利用することで、内部からの広がりはもちろんのこと、その周辺環境が求心的に建築に対してつながりを求めるようになり、現実的に建築の内外が連続した関係を築き上げていると言えます。

「せんだいメディアテーク」四方に限りなく消えていく水平スラブイメージ
同心円状な広がりと求心的なつながりの境=抽象的なガラス素材

すなわちそれは、建築内部が屋外に対してそれらの対立関係を曖昧にし、誰もが気軽に立ち寄れる求心的な美術館を現実的に、視覚的に実現しているということになります。