地面から浮遊するトイレ!?「千駄ヶ谷駅前公衆トイレ」をご紹介します!SUPPOSE DESIGN OFFICE設計 東京都渋谷区

基本情報

所在地〒150-8010 東京都渋谷区宇田川町1-1
アクセスJR中央線「千駄ヶ谷駅」・都営大江戸線「国立競技場駅A4出口」すぐ
HPhttps://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/koho/photo/20200904_kousyubenzyo_00001.html

地面から軽々と浮遊するコンクリート壁

2020年8月20日、当初東京オリンピック開催前に合わせてJR千駄ヶ谷駅前に公衆トイレが竣工しました。谷尻誠さん率いる「SUPPOSE DESIGN OFFICE」により設計されました。

建物の特徴は4周の外壁コンクリートが地面から500mm浮いており、2本の柱で支えられています。

重々しいコンクリートが浮遊する

内部は浮遊する外壁の隙間と天井からスリッド状に自然光が差し込み、明るい空間となっています。従来の公衆トイレの閉塞感をも全く感じさせない誰もが気軽に利用できるトイレです。

スリッド状に光が差し込む

トイレは男女で分けない代わりに全て個室で仕切られおり、誰もがフラットに使用できるジェンダーレスなトイレです。

個室で仕切られたトイレ

天井高は7.5mあり、風や音が通り抜けます。浮いた外壁が視覚的に外とつながるので、従来の近寄り難い公衆トイレのイメージを払拭しています。

地面から浮遊する外壁は視覚的に内部と外部をつなぎ、わかりやすいトイレになっている

このように浮遊する壁と高く伸びる柱はにより、狭い平面でありながらも上にスーッと伸びるような感覚の中、平面的な広がりを感じることができ、開放感のあるトイレになっています。

菊竹的文脈

福岡県久留米市にある菊竹清訓設計の「徳雲寺納骨堂」 壁が床から浮遊する

トイレの個室はトイレ全体を完全に仕切るのではなく、家具のように7.5mの大空間に配置されています。また地面から浮遊したコンクリート壁は菊竹清訓氏の「徳雲寺納骨堂」を思い起こさせます。

するとコンクリートボックスは完全に内外との空間を仕切ることなく浮遊することで、中にいる人は地面の床がどこまでも続いていくような屋内外の連続性を感じることができます。

床が四方に連続して伸びていく感覚は、家具で空間が曖昧に仕切られ、縁側を介して内部の床が外部がとつながっていた日本家屋の空間がもとになっています。

空間全体の中にぽつんと置かれたトイレ仕切りは空間全体を完全に仕切ることなく、日本家屋の中の家具のように扱われることで、中にいる人は床が家具の合間を縫って四方へと広がっていく、床の広がりを感じることができるのです。

トイレひとつにしても日本人建築家による空間に対するDNAを感じ取ることができます。