透明なガラス張りの美しい展望デッ「葛西臨海公園展望広場 レストハウスクリスタルビュー」をご紹介します!谷口吉生氏設計

基本情報

所在地〒134-0086 東京都江戸川区臨海町6-2-1
アクセス「葛西臨海公園駅」より徒歩7分
開館時間9:00〜17:00(最終入館は16:30)
入館料無料
HP葛西臨海公園ホームページ

東京湾へのゲートウェイ

葛西臨海水族園展望広場レストハウス(クリスタルビュー)は谷口吉生氏の設計により1995年に竣工しました。

建物は「葛西臨海公園」の園内にあり、JR葛西臨海公園駅の駅前から東京湾に向かって一直線に伸びるプロムナードの「海へのゲート」としての象徴碑、また東京湾を一望できる展望デッキ、園内の休憩スペースとして利用され、地下にはカフェテリア、売店、ラウンジがあります。

東京湾へのゲートウェイ
海側より、地下には公園の便益施設としてカフェテリア、売店、休憩ラウンジがある

日中を通して背後から太陽に照らされる全面ガラス張りのゲートは、建物内部の様子がシルエットとして浮き上がるように見え、駅から海へと伸びるプロムナードを歩いているうちに、次第に大きくなる建物が、その先に見える東京湾の景色への期待感を高めます。

駅から東京湾に注ぐプロムナード、建物内部の様子がシルエットとして浮かぶ
ゲート部分はRC造の壁柱と2つのコアを結ぶブリッジからなる

全面ガラス張の展望デッキ

建物は主に2つのコアからなり、コア同士はゲートを成すブリッジで結ばれています。東側のコアは展示コーナーや階段、西側はエレベータとシャフトが収められています。さらに東側のコアの周りをスロープが渦巻いており、回遊性のある動線によって移り変わる景色を楽しむことができます。

奥が東側コア手前が西側コア、コア同士はブリッジで結ばれる

訪問者はまず建物のゲート右脇のエントランスから入り西側の階段で最上階まで上がります。最上階は一直線状のブリッジと展示コーナー、さらにその先には展望コーナーがあります。

一直線状のブリッジと展示コーナを見通す

外壁仕上げがガラスサッシのため、内部の鉄筋コンクリート造を目の前の海の塩害から守ることができます。また屋根の荷重はガラスサッシとゲートの壁柱で支えられています。すなわち建物内部と外壁の構造はそれぞれ完全に独立しているということです。

ブリッジより上って来た階段を見通す

ガラスとブリッジ・コアの間には水平ブレースが設けられ、横力をコアに伝えることで無柱の内部空間を実現しています。

外壁はブリッジ・コアとの水平ブレースで横力をコアに伝える

屋根が完全に内部のコアより独立して浮いているため、プロムナード上から見たときに内部のヴォリュームがそのままシルエットとして浮き上がるように見えます。海を背景にもつ敷地の特性を最大限に引き出した結果と言えます。

展望エリア、限りなく床が四方の景色に溶け込んでいく
展望エリアより展示エリアを望む

帰りは東側コアのスロープを巡り降りていきます。厚さ200mm程のスロープスラブはコアからキャンチし、外からは横長の細いスラブが美しく見えます。

コアからキャンチするスラブ

スロープの中腹には葛西臨海公園の動植物を紹介する展示コーナーがあります。

最上階展望コーナー床は空調設備を収めた梁で支えられ、床スラブは外から細く見える

スロープを下りると、建物を一巡しました。

東側コアスロープを下りた出口

ガラスは何のためか

建物全体はガラスで覆われています。これは360°眺望が見えるためのものと言えば嘘にはなりませんが、ガラスの最大の目的は内部の鉄筋コンクリートを塩害から守るために付随的に設けらていると言えます。

すなわち建物の主体構造はあくまで内部のコアで、そこからキャンチするスロープなり床なり、ガラスと屋根はそれら展望デッキを結果的に内部空間化さたものに過ぎません。しかし現実的にはそのようなガラスによる内部空間化が求められますから、横力に対応する水平ブレースや屋根の荷重に対応する新たなガラスサッシの技術が用いられています。

とは言うものの、結果的に主体構造から独立したガラスは、駅からのプロムナード上から太陽光により内部がシルエットして浮かび上がり、建築的な美しさを造りだしています。