基本情報

所在地〒500-8076 岐阜県岐阜市司町40-5
アクセスJR東海道本線「岐阜駅」より徒歩25分
「メディアコスモス前」バス停下車すぐ
「市民会館・裁判所前」バス停下車すぐ
「メディアコスモス・鶯谷高校口」バス停より徒歩3分
開館時間9:00〜21:00(中央図書館は 9:00〜20:00、スターバックスコーヒー 8:00〜21:00)
休館日毎月最終火曜日(祝日の場合翌日閉館・年末年始と重なる場合は前週の火曜日閉館)、12月31日~1月3日
HPhttps://g-mediacosmos.jp/

広大に広がる低層の建物

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は伊東氏の設計により2015年に竣工しました。建物はJR岐阜駅から北に伸びる「金華橋通り」沿いの2km程の場所にあり、周辺には警察署や裁判所、坂倉準三氏設計の「岐阜市民会館」が建ち並んでいます。さらに敷地真南に隣接する旧岐阜大学医学部跡地には2015年、新たに岐阜市庁舎が移転建設され、岐阜市の中枢地となっています。

約14,848㎡の広大な敷地には、地下1階・地上2階建の低層の建物が広がり、金華橋通り側沿いには長良川の伏流水を利用した水路が計画されました。水路沿いには多くの樹木が植えられ、また北には長良川が流れ、西には岐阜城がそびえ建つ金華山を望めることができ、あたり一体は自然豊かな場所となっています。

敷地に広大に広がる二層の建物と周囲の多くの樹木が、豊かな景観をつくり出す
水路はカツラ、カンヒザクラ、ツブラジイ、ヒトツバタゴ、サンシュユなどの樹木が植えられた並木になっており、自然豊かな公園となっている

1階、2階ともに90m×80m四方の建物になっており、1階は主にスタジオや工作スペース、展示ギャラリー、ホール、会議室、書庫、市民活動支援ブース、カフェ、コンビニエンスストアなど、誰もが利用できる諸室からなり、それらの余白にはテーブルやテラス、ホワイエ、ベンチなど気軽に休憩できるスペースが多く設けられています。

交流・談話スペース、写真左には可動畳が置かれる
左には交流・談話スペースと奥には市民活動支援ブース、ガラス張りは図書館の開架書庫「本の蔵」となっている

中央図書館

2階は「岐阜市立中央図書館」の開架・閲覧スペースになっています。90m×80m四方の平面、高さ約6mの巨大なワンルームの中に、直径8〜14mの「グローブ」と呼ばれる11個の傘が全体に吊り下げられています。グローブ自体は金属金棒のロッド材を骨組みとした、ポリエステル・ファブリックの半透明の素材でできています。

さらにそのグローブの周りには開架本棚が渦を巻くように配置されています。グローブとその周りを取り巻く本棚は本のジャンルごとに分かれているので、グローブを目印に渦に誘導されるかのように、目的の本までストレスなくたどり着くことができます。

グローブは大小ざまざまな本棚の中心として、「親子のグローブ」や「児童のグローブ」、「ヤングアダルトのグローブ」、「ゆったりグローブ」、「文庫のグローブなど」、それぞれの年代やジャンルにあった用途・機能を併せもっています。

例えば児童本の渦巻の中心となる「親子のグローブ」

本のジャンルごとに配置されたグローブは、親子のグローブや大まかな年代層ごとに分かれており、

現代建築の問題

私たちは快適で安全な都市生活を送れるようになりましたが、現代の都市空間は、私たちが元来暮らしてきた自然環境とは全くかけ離れた「超越空間」に、建築家の伊東豊雄氏は警鐘を唸らしています。

特に日本人は、常に自然と密接な関係にあったため、快適で楽ちんな都市システムに依存してしまうと、様々な社会問題を引き起こす要因になってしまいます。

現代の建築は、私たちが雨風をしのぐためのシェルターとしてでなく、様々な性能を満たさなければなりません。しかし、あまりにも自然現象を克服した無菌で一定に保たれた人工空間下で過ごすようになった私たちは、そこまで単純で順応な動物ではないのです。

超自然空間が都市を埋め尽くす

自然を凌駕しない建築のあり方

現代の建築に求められる空間とは、空調設備による制御可能なものです。そのため多くの建築で自在に室内環境をコントロールできるように、高断熱・高気密性能を誇った”壁”が取り入れられるようになりますが、伊東氏は、そんな私たちを外気から切り離している壁を、いかに取り払うかを模索されている建築家の第一人者です。

例えば同氏設計の「台湾大学社会科学棟 図書館(台湾,台中市)」は、アルゴリズムによって配置された蓮の葉のような構造体のユニットがさまざまな疎密さを生み出し、まるで木々の木漏れ日の下にいるような空間になっています。

伊東さんによればアジアにとって渦巻きとは、何か特別な力をもって感じられるといいます。

例えば日本の風呂敷には渦巻き模様が描かれています。風呂敷はただの1枚の布に見えるかもしれませんが、中に包む物の形や個数によって風呂敷は柔軟に中のものを包みます。すなわち風呂敷は包んで初めて形が与えられるということになります。一方西洋のカバンは最初から形が与えられ、後から中に物を入れますが、最初からその包むものを限定してしまっています。

伊東さんは、この風呂敷が中のものに合わせて生み出す曖昧な形、すなわち線形を前提としないようなことを、「ぎふメディアコスモス」で実践されています。

「ぎふメディアコスモス」は2階が市の図書館図書館となっており、本棚が渦を巻いたかのように配置されています。それらの渦は、天井からぶら下げられた半透明のグローブを中心に描かれています。

渦巻きを巻く書架

またそれぞれのキューブの周りに配置された本棚には、本のジャンルごとに本が配架されています。来館者は自分の目的のコーナーまで、渦のスパイラルに巻き込まれるかのようにたどり着くことになります。

こうすることによって自然発生的に渦に引き込まれるかのような人の導線が生まれ、よりわかりやすい本の配置、よりストレスのない図書館内の移動を実現しています。

そして渦に引き寄せられるように、最終的にはそれぞれ大きさや家具が異なる中心に配置された半透明のキューブにたどり着くこととなります。このように自分が好きな場所を選んで、本を読んだりあるいは寝転んだりと、ありのままに過ごせるというわけです。

メディアコスモス2階平面図

キューブの機能

各半透明のキューブには利用者が”快適”に過ごせるような装置がります。”快適”とは空調装置のように一定に保たれた環境だけでなく、まるで外の気持ちの良い風の流れの中で本を読むよめるような環境のことです。

この図書館は80m×90mの平面に11個のグローブが吊り下げられています。実際にグローブの中に入ってみると上に高い頂部上からは、柔らかな自然光で充満しています。さらに夏の暑い時には温まった空気が上部から排出され、冬には温かい空気がグローブ内を循環するようになっています。

伊東さんはこのグローブを小さな家と見たて、80m×90mの「大きな家」の中に11個の家が点在しているというイメージです。すると「台湾大学社会学科棟」よりももっと、内外の”反転”が起きているということがわかります。

台湾の方では中が外と連続した外部のような空間でしたが、実際は内部空間にどまっていました。しかし「ぎふメディアコスモス」は全体の中の小さな家を、自然光に満ちた空調の効いた空気の流れのある気持ちのよい空間にすることで、「小さな家」以外の本棚のある空間は、あたかも周囲の街と連続した外部空間であることがわかります。

キューブ以外の場所は周囲の街を取り込んだあくまで外部空間ある

つまり台湾で実践された、渦巻きが周囲の環境を吸い寄せるかのように一体の関係を築いていましたが、「ぎふメディアコスモス」ではさらにその渦巻の中心部に完全な内部空間を配置することで、外部ともっと曖昧な境界を実現しています。

実際にエネルギー負荷の方も、キューブ内に完全な空調システム装置を備えればよいので、80m×90mのひとつの大空間を完全に賄わなくてよいということです。

外部と曖昧な境界を生み出す
街に対して四方に向かって連続するグローブ

実際に、この建物では地下水を利用した床輻射冷房と除湿装置との組み合わせ完全な冷暖房システムに頼らない仕組みになっています。またソーラーパネルを利用することで、消費エネルギーを従来の建物の2分の1までに低減しています。

本棚

天井が木材のため、実は設計の最終的な大臣認定の段階で、国土交通省の許可が降りなかったといいます。

そこで本棚の本体部分をプレキャストコンクリート製、棚を鉄板にすることで、万が一本が燃えても燃え広がらないような仕組みになっています。

雑誌本棚

椅子も通常ならフカフカのソファですが人工の籐を使った不燃加工になっています。

外構

西側にあるプロムナードのせせらぎの水は、地下水を汲み上げて建物で空調に使用した後の水が流れ、そこから地下へ戻すという循環システムになっています。