角川武蔵野ミュージアム

埼玉県所沢市に2020年11月にグランドオープン予定の「ところざわサクラタウン」の敷地内に、8月1日(土)にプレオープンした「角川武蔵野ミュージアム」。図書館と美術館と博物館が混在した複合文化施設を予定しており、それに先駆け、1階の「グランドギャラリー」と「マンガ・ラノベ図書館」、2階のカフェがオープンした。グランドギャラリーでは竣工記念として、角川武蔵野ミュージアムを設計した隈研吾氏の「大地とつながるアート空間の誕生ー石と木の超建築」展が10月15日(木)まで開催される。

建物の外観は中国山東省から切り出してきた、割肌仕上げの花崗岩が使用されている。職人による精巧な仕上げがなされており、割肌仕上げの表面の荒々しい石の表情とは別に、一枚一枚が正確で1mm以下の正しい寸法できれいにカットされ、それらのメリハリがとても美しい外見となっている。

全体的に異なる表情の石で構成され、あたかも昔からずっとそこにあったかのような地形が、突如地上に出現したかのような人工物である。そのため周辺環境と比べて突出しがちなスケールの物体だが、むしろ昔からの馴染みのあるような、街に溶け込むファサードである。

隈氏のファサードデザインの手法である、「切り分け」がとてもうまくいっている事例の一つであると言える。

全体が、一つ一つの異なる表情を持った石によって積分されて積み上がってできたかのような建築物
建物の入り口が全体のスケールに比べて極端に小さいため、訪問者は大きな石の洞穴の中に入っていくというワクワク感を得られる
周辺環境と対峙しない、むしろこの建物の方が昔からそこにあったかのような素材感

素晴らしいディテール

近づいてみると、一枚一枚がしっかりと決められた大きさの寸法でカットされている。また石と石の境界である、「通り」がよく、いかにも職人の技が素晴らしいかというのが見て取れる。

表面の荒々しい表情とは別に、しっかりとした「通り」、このギャップがたまらない
石の「逃げ」が均一に仕上がっているため、不揃いの中に絶対的な秩序が保たれているディテールには感動する

このディテール図を見る限り、石のカット時の精巧さがいかにもわかる。というのも下地壁である鉄筋コンクリートは施工時にどうしても表面に多少のズレが生じてしまい、図面のような精度の高い施工ができるとは限らない。そのため下地壁と天然素材である石の間にはそれらのズレを緩衝させるための金属金物を取り付けているが、それでいてもどうしても仕上げ材である石と石の間の逃げ寸法に狂いが生じてしまう。が、人工物でもない自然素材である石を職人が精巧にカットすることで、とても精度の高い仕上げ面になっている。

このディテール図から見て取れる通り、石をカットする時点ですでにかなり精巧な石の寸法を担保していたことがわかる

外構

水面と石、空が毎回異なる表情を生み出す。

時が経つにつれ、成長する鳥居
周辺環境と連続的な外構

内観

1階エントランス、外観のデザインとはあまり関係性を持たない内装に、期待を裏切られた
1階エントランスから地下の展示室へ向かう階段、2〜5階は2020年秋以降開業予定
黒い壁に囲まれた階段は、これから地下の洞窟へと向かうような空間を感じさせる
地下展示室のロッカー
展示室から1階エントランスへ上がる階段
階段を上がった先にはエントランスの太陽光に遭遇する、まるで地下の洞穴から這い上がってきたかのような感覚

地下展示室

地下展示室


地下展示室