「金沢市立玉川図書館」基本情報

所在地:〒920-0863 石川県金沢市玉川町2-20
アクセス:JR北陸本線・IRいしかわ鉄道「金沢」駅より徒歩15分
「こども図書館」「玉川図書館」バス停より徒歩1分
「南町・尾山神社」「武蔵ヶ辻・近江町市場」バス停より徒歩5分
開館時間:火曜~金曜10:00~19:00、土曜・日曜・祝日10:00~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合、翌日休館)、特別整理期間(6月第1月曜日-翌々日、11月の最終月曜日-翌週の金曜日)、年末年始(12/29〜1/4)
ホームペジhttps://www.lib.kanazawa.ishikawa.jp/?page_id=113

「金沢市立玉川図書館」ニューヨーク近代美術館を設計したことで名高い谷口吉生と父、谷口吉郎による最初で最後の親子共同作品です。また旧石川県庁舎や国会議事堂などを手掛けた矢橋賢吉の設計による「旧専売公社金沢工場」の建物の隣に建っており、それら既存の建物と新しい建築の融合が図られていいます。現在、旧専売公社工場は玉川図書館別館の「近世資料館」として使われています。

既存の環境と共存する空気のような建物

両建物の関係性について考えてみると、谷口氏の既存の建物に対する配慮が伺えます。まず建物の特徴は、図書館内部の大空間です。大きな空間を実現するには柱のスパンを長くとり、大きな梁が必要になります。実はこの柱と梁に注目してみると、面白い設計になっているのが分かります。梁は建物内部で完結するのではなく、建物の外部まで貫いています。これが建物の内部と外部に思わぬ関係性を与えます。

左:谷口親子による建物、右:既存の「旧専売公社金沢工場」
両建物をつなぐ橋
図書館内部

下の平面図に赤で梁を付け加えました。すると梁を支える柱は建物の端と、そのひとつ向こう側の建物、「旧専売公社金沢工場」にあることがわかります。つまり建物内部から始まった梁は、内部→外部へと連続的につながっており、現在の中庭と図書館内部は同じ梁の下の空間を有していることがわかります。これが建物の内外に良い関係性をもたらします。内外、柱のない大きな梁を共有することで、図書館とその外部空間がひとつの連続的な空間であることがわかります。それによって、ひとつの大きいボリュームの建物を既存の建物の前に建てることなく、大きな空間を共有する中庭と図書館になるのです。

内外を貫く梁、柱が途中にないので大きな空間を内外で共有する

下の平面図に考えつく導線を記してみました。中庭を介して抜けていく導線は、一旦ラウンジを突き抜けることになります。また「旧専売公社金沢工場」は開架車庫以外の機能の他、外部からの導線として機能しています。中庭の導線と「旧専売公社金沢工場」からの導線は両建物をつなぐラウンジで交差します。

外からの導線は一旦中を経て、橋の下を潜るようになっている
外からの中庭へのアプローチ

ここで谷口氏らが設計した建物を概念図にしてあらわしてみました。すると、まるで「空気」のような建築であることがわかります。グレーが元々あった「旧専売公社金沢工場」です。赤で囲った箇所が先ほど説明した中庭と図書館の一体的な空間、赤の線は人の導線を示しています。

谷口氏らの設計した建物の中で、物質性をもち空間に影響を与える建築的要素といえば、黒色で示した壁のみであることがわかります。その他のガラスや柱は単に、内と外の線引きに過ぎず、空間性になんら変化をもたらしません。「L」字の壁が対照的に並んだだけで空気のような建築です。

このように既存の建物を凌駕しない、融合が図られた建築であることがわかります。

概念図