地下に広がる高い展示室に思わずびっくり!【横須賀美術館】をご紹介します!!山本理顕設計 神奈川県横須賀市

基本情報

所在地〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4-1
アクセス「JR横須賀線横須賀駅3番のりば」または京急線「横須賀中央駅7番のりば」または京急線「馬堀海岸駅1番のりば」より京急バス「観音崎」行(須24、堀24)に乗車し、「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前バス停」下車
開館時間10:00〜18:00
休館日毎月第1月曜日(祝日の場合開館)、年末年始(12月29日〜1月3日)
入場料一般:380円、高校・大学生・65歳以上:280円、中学生以下:無料(企画展は別途料金)
HP
https://www.yokosuka-moa.jp/index.html

山と海に囲まれ、地下に埋もれた美術館

「横須賀美術館」は山本理顕氏の設計により2006年に竣工しました。建物は主に美術館と図書館から成ります。敷地は前方を海、三方を山に囲まれた谷地形になっています。

建物は地下2階、地上2階建で展示室や収蔵庫はほとんどが地下に埋められ、斜面地と連続した美しいランドスケープ景観を生み出しています。

奥側と左右、山々に囲まれ、地下に埋もれた美術館

海側の美術館の前は、誰もが利用できる広場として芝生の斜面になっています。そこでは目の前に広がる東京湾をながめたり、走り回ったり、ブルーシートを敷いて休憩したりなど思いのままに過ごすことができます。

美術館エントランス庇より目の前の広場と東京湾を眺める、広場は公園として子供から大人まで多くの人がありのままに利用する

建物を地下に埋め高さを7.6mに抑えることで、背後の山の遊歩道からのアクセスを可能にしています。屋上には遊歩道から連続した展望テラスが設けられ、目の前の東京湾を一望することができます。

遊歩道とテラスはブリッジで結ばれる
手前から遊歩道、テラスそしてその先に東京湾が広がる

建物は大半が地下に埋もれ三方を地形に囲まれているため、建物全体に十分な自然光を取り入れるために、擁壁と建物外壁の間にスペース(光庭)が設けられています。

もともとあった斜面地を、建物の外周からセットバックして切り出すことで、建物の四方に自然光を取り入れるための光庭スペースを設ける

鉄板とガラスのダブルスキン

建物は外壁のガラスと内壁の鉄板によるダブルスキン構造になっています。目の前が海のため塩害による劣化をガラスが防いでいます。内壁の鉄板は地下2階から地上2階にかけて、展示室や収蔵庫、ラウンジ、エントランスホールにいたるまで美術館のほとんどを覆っています。

鉄板には所々丸い穴が空けられています。穴は外の自然光を内部に取り入れ、エントランスやギャラリー、ラウンジは穴が多く、展示室は穴が少なく、その場所に必要な光の加減によって穴の数は調節されています。すなわちガラスと鉄板によるダブルスキン構造によって適材適所に採光することができるのです。

4層分の展示ギャラリーと2層分のエントランスホールが空間的に交差するブリッジ、多くの自然光が取り入れられている
エントランスホールの穴は東京湾のシーンを切り取り、限りなくつなげる
エントランスホールと段々状の情報ラウンジ、螺旋階段は屋上テラスにつながる

ダブルスキン屋根は、上弦材が全体のプランに対して斜め45°にグリッド状交差しています。

屋根はトラス構造で屋根裏は照明や消火設備が収められる

ダブルスキンよりもダブル光庭美術館

鉄板壁内は壁に沿って4層分の巨大な展示ギャラリー空間が取り巻いています。4層分のギャラリーは視覚的にエントランスホールとを結んでいますが、低く抑えられた外観・入口とは対照的に一気に地下へと開けるその視界は来場者を驚かせます。展示ギャラリーの4層分のヴォイドは地下に自然光を届けることから、建物の内側にある第二の光庭と言えるでしょう。

出典:新建築 谷状の敷地

すなわち敷地レベルで見れば、建物外周の光庭は、谷戸状の地形の中の建物に光を取り入れるためのスペースで、建物スケールで見れば、内壁内周の展示ギャラリースペースは、凹状の地下に光を取り入れるための光庭であることがわかります。つまり敷地スケール、建築スケールで段階的に自然光を取り入れていることがわかります。

出典:新建築 外壁の外周を光庭、さらにその内周を光庭が取り巻く

まず第一段階は敷地レベルで自然光を建物のブルスキン全体に光を取り入れるということを考え、第二段階に建築スケールでダブルスキン空間に充満する自然光を地下の各展示室に落とし込むかということです。

ダブルスキンはその第一段階と第二段階のプロセスをつなぐ中間的な空間をになっていると言えるでしょう。