東京都墨田区に妹島和世氏設計の「すみだ北斎美術館」が2016年に開館しました。

浮世絵で有名な葛飾北斎はここ墨田区亀沢で生まれ、生涯この地で過ごしました。墨田区内では27箇所にも及ぶ箇所で点々と引越しながら、彼の残す作品には両国橋や三囲神社や牛嶋神社など当時の隅田の様子を多く残しています。

また世界的にも北斎の浮世絵は人気を博しており、この美術館はそんな北斎の浮世絵や生い立ちを多くの人に知ってもらうための美術館なのです。

周辺環境と一体となった美術館

「すみだ北斎美術館」は敷地内に4つの異なる形状をしたヴォリュームを配置し、それぞれが上の階にいくにつれ融合したり離れたするなどして、そのヴォリューム間の隙間を周囲の公園や街に対して、自由な空間となるように設計されています。

すみだ北斎美術館の似たような建築事例として、同氏設計の「なかまちテラス」が挙げられます。

「なかまちテラス」も、いくつかの異なる棟のスラブをずらしながら配置され、下の階では分棟であったものが上の階に行くにつれそれらが融合し、街に対して開けた隙間空間を提供しています。

しかし、「なかまちテラス」との大きな違いは、すみだ美術館の方では敷地に余裕がないことです。

そこで採られた手法というのが、「切断」です。つまり「なかまちテラス」をそのままこの墨田区の敷地に持ってきて、土地からはみ出ている部分をその敷地境界線に合わせて、切断し、できたのがこの「すみだ北斎美術館」であるといっても過言ではありません。

その切断してできた断面がそのまま建物のファサードとして各4面に出現しているということです(あくまでわかりやすいようなイメージです)。

つまりこの建築は結果的に発想が逆転しており、異なるボリュームを組み合わせてできたのではなく、そこにもともと合った岩の塊をえぐって、ゴツゴツした岩山のような、洞穴のような隠れ場を周囲に対して提供していることがわかります。

Plan
公園と連続的に隙間を提供する
岩山を削ってできた隙間空間
西側立面
東側立面
公園からのアプローチ、建物を切断しそれがファサードになることで、どこからでもアクセスできるような正面のない建築になっている
公園の反対から公園を望む

1階エントランス

1階エントランスにはチケットカウンターとショップがあります。また同じフロアにはなれとして小さな図書館と会議室もあります。

美術館エントランス
美術館エレベーターホール、外部空間が内部に介入する
美術館のエントランスと屋外の隙間空間を介して、小さな図書館がある、このように建物外の公園からの連続的なアプローチをとっている
会議室

3階

2階は事務室や収蔵スペースなど事務的なフロアになっています。

3階はホワイエと企画展示室があります。この美術館の要求条件として、あまり自然光を取り入れないことが前提でした。

ここでは4つのボリュームの隙間が上にいけばいくほど狭まることを利用して、その接点ギリギリから少量の自然光を取り入れることで、合理的なデザインであるといえます。

3階ホワイエ、ボリューム間の小さな隙間から自然光が差し込む
4階展示室への螺旋階段
3階は程々に外部空間が介入する

4階

4階は常設展示室と企画展示室です。

4階の開口はここだけとなっている
常設展示室

ディテール

外壁仕上げのアルミパネルは一枚1250mm×5600mmの厚み3mmのアルマイト加工されたもの。周囲の景色を柔らかく映し出す。

アルミパネルの勝ち負け
綺麗な仕上がり
一部精度が狂ってる箇所も?


「すみだ北斎美術館」