「十和田市現代美術館」をご紹介します。建築自体が現代アート! 西沢立衛建築設計事務所

青森県十和田市にある、西沢立衛氏設計の「十和田市現代美術館」をご紹介したいと思います。

青森県内の建築は下の記事をご覧ください。

基本情報

所在地〒034-0082 青森県十和田市西2-10-9
アクセス・「八戸駅東口⑤バス停」より十和田観光電鉄バスに乗車し(60分)、「官庁街通バス停」下車徒歩5分
・「八戸駅西口」よりJRバスあいらせ号に乗車し(40分)、「十和田市現代美術館」下車
・「七戸十和田駅南口」より十和田観光電鉄バスに乗車し(35分)、「十和田市現代美術館前」下車
開館時間9:00〜17:00(最終入館16:30)
閉館日毎週月曜日(祝日の場合翌日閉館)、年末年始、展示替期間
入館料大人:1,200円、高校生以下:無料
HPhttps://towadaartcenter.com

官庁街通り

「十和田市現代美術館」は2008年に西沢立衛氏の設計によりオープンしました。美術館は町の中心である「官庁街通り」に面しており、全長1.1kmものある通り沿いには165本の松と、156本の桜が植えられ、「日本の道100選」にも選ばれています。

十和田は、戦前は馬産地として「陸軍軍馬補充部」が設置されていました。戦後まもなく官公庁用地として整備されましたが現在では市町村合併などによる庁舎移転により、美しかった官庁街通りの景観が壊れてしまいました。

そこで市は、空き地を美術館に転用することで今までになかった新しい通りの風景を創出できないかと考えました。

出典:Sumally 「官庁街通り」

美術館なのに外から丸見え!?

「十和田市現代美術館」は4358㎡程の敷地の中に大小15個のお部屋が点在しており、お部屋同士は透明な廊下で結ばれいます。その内の4個が企画展示室、2個が市民活動・休憩スペースとなっており、ほか全てが常設の展示室になっています。

出典:新建築 お部屋の隙間も屋外展示スペースとして利用

点在してできたお部屋の隙間スペースは、屋外展示場として利用されアート作品が展示してあります。

展示室の隙間も展示スペースとして利用され、官庁街通りからも見渡せる
隙間を利用した展示により屋内外を同時に体験できる
透明度の高さが他の展示室を垣間見れる

また部屋の外壁には風景画が描かれており、キャンバスとしても利用されています。

官庁街通りに開かれたアート作品

官庁街通りから展示室の大きなガラス越しに中のアート作品を鑑賞することもできます。

敷地南側より

すなわち十和田市現代美術館は、内部の展示空間はもちろんのこと、その配置によって発生した展示室同士の隙間、さらには内部空間を構成する外壁をも展示利用することで、敷地全体が官庁街通りに置かれた展示室」として町に開かれた美術館であることがわかります。

大小さまざまな展示室

十和田市現代美術館は「現代アート」を中心に展示を行う美術館です。現代アートは立体や映像、インスタレーションなど、作品とそれを展示する空間がより密接に影響します。

現代アートによって生み出される展示室ヴォリューム(Ron Mueck)

当美術館の作品のほとんどが常設であるため、作品の入れ替えが発生せず半永久的に展示することになるので、その作品に対応する空間のヴォリュームがそのまま町の景観として現れるのも面白い点です。

左が住宅街、右が官庁街通り、展示室が町の景観を成す

例えば縦動線や企画展示室などヴォリュームの伴うお部屋は敷地の奥側(北寄り)に配置され、敷地に奥行き感を出し官庁街通りに圧迫感を与えないようになっています。

最高高さ17mの縦動線

大小の様々なヴォリュームが敷地北側にある住宅街と、同じ官庁街通りに面した高めのマンションやビルとバランスよく調和しています。

休憩スペース内観

美術品の立場の逆転

美術館とは本来美術作品を収集、保存、展示するための施設ですので、作品を保護するという意味合いが強くなります。

一方、和田現代美術館は敷地全体が町の展示スペースとして、ひとつの景観を生み出しています。すなわちそこを訪れるひとも、ひとつのアート作品の景観の一部となるのです。そんな場を生み出す建築自体も現代アートと言えるでしょう。